先に見た数字が基準になる
定価を大きく書き、その横に割引後の価格を書けば、割引価格が安く感じられます。定価が実際に取引されていた価格でなくても効果は変わりません。人は絶対的な価値を判断しにくいため、横に置かれた数字を基準にするからです。比べる相手を向こうが決めた時点で、判断は傾いています。セット商品の横にわざと高い選択肢をもう一つ置き、真ん中のものを選ばせるやり方も同じ原理です。最初に見た価格が高いほど、残りが手ごろに見えます。
先に見た数字が基準になる効果、失う感覚を作る表示、すでに使ったお金の罠、分割価格と簡単な支払いなど買わせる仕掛けと、支払い直前に問いかけることを整理しました。
定価を大きく書き、その横に割引後の価格を書けば、割引価格が安く感じられます。定価が実際に取引されていた価格でなくても効果は変わりません。人は絶対的な価値を判断しにくいため、横に置かれた数字を基準にするからです。比べる相手を向こうが決めた時点で、判断は傾いています。セット商品の横にわざと高い選択肢をもう一つ置き、真ん中のものを選ばせるやり方も同じ原理です。最初に見た価格が高いほど、残りが手ごろに見えます。
同じ大きさでも、得る喜びより失う痛みのほうが大きく感じられます。ですから「本日まで」「残り1つ」「いま買わないとこの価格ではない」といった表現が強く働きます。これらは商品の価値についての情報ではなく、買わなかったときの損失感を作り出す仕掛けです。締め切りがあれば、比べる時間も一緒に消えます。
すでに支払ったお金は取り戻せないのに、次の判断に影響します。会費を払ったから行かないともったいないという理由で行きたくない場所へ行き、買ったものが合わないのに代金がもったいなくて使い続けます。すでに出たお金はいまの選択とは無関係だと切り離してこそ、合理的な判断になります。
大きな金額を一日いくら、ひと月いくらに分けて見せられると、負担が小さく感じられます。分割払いや後払いも、支払う痛みを未来へ先送りし、いまの決定を軽くします。保存したカードでひと押しすれば終わる支払いは便利ですが、お金が出ていく感覚がほとんどなく、支出を実感しにくくなります。現金を使うときより多く使ってしまうと感じる人が多いのはそのためです。支払いが簡単すぎると感じたら、保存した支払い情報を消しておくだけでも、一度立ち止まる隙ができます。月額で示された商品は、一年分の総額で計算し直すと判断が変わることもあります。
「いま何人が見ています」「今週いちばん売れています」、数千件の口コミ。こうした表示は、他人の選択を自分の判断の根拠にさせます。情報が足りないときに人に倣うのはそれなりに合理的な方法ですが、その数字がどう集計されたのかはたいてい分かりません。口コミは平均の評価より、低い点をつけた人の内容を読むほうが、実際の短所がよく見えます。
ストレスを受けたあとに買うものは、必要だからではなく気分を変えようとしている場合が多いものです。その瞬間には効きますが短く、物は残ります。何のために買うのかを一文で言ってみると、この場合が選り分けられます。「気分転換のため」なら、たいていもっと安い別の方法があります。疲れているときや夜遅くにも似たことが起きるので、判断力が落ちた時間帯の買い物は翌日もう一度確かめる価値があります。
買い物かごに入れて1日置く、という規則一つだけでも衝動的な買い物は大きく減ります。締め切りに追われる感覚そのものが合図だと考えてよいでしょう。また契約のように自動で続く支出は定期的に一覧を確かめる必要があります。決めなければ続くように設計されているからです。規則は単純なほど長続きします。例外を作らない小さな規則一つのほうが、複雑な家計表より実際によく守られることが多いものです。
規則をもう一つ作るなら、支払いの直前にいくつかの問いを通すことです。これらの問いは買うなという意味ではなく、自分が選んだものなのか、選ぶように設計されたものなのかを見分ける仕掛けです。答えがはっきりしていれば買って構いません。この文章は消費の傾向を診断する検査ではなく、よく使われる仕掛けを整理したものです。買いたい衝動が繰り返し抑えられず、借金や生活に支障が出るほどなら、一人で解決しようとするより相談機関の助けを借りるほうがよいでしょう。